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冬の時代

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先日、ここ数ヶ月間頭を占めていた(心を悩ませていた)プロジェクトを無事完了することができた。 プロの手助けを得て、なんとか形にできた。

これは僕にとっては特別な意味を持つ仕事だったので、嬉しかったしホッとした。

そこからの帰り道。

独立したての10年前に住んでいた深江橋を通りがかったので、車を止めて1人で散歩してみた。

いつもここを車で通る度に、当時の重たい記憶をこの土地に残していることに気付いていて、いつか機会があったらちゃんと向き合って供養したいと思っていたのだ。

車から下りて、いつも通勤で使っていた地下鉄の狭い道を歩いてみたり、当時の住んでいたマンションへと続く道筋を歩いていると、昔の感覚がフラッシュバックするみたいだった。

当時住んでいたマンションは空室になっていて、一階にあった弁当屋もお好み焼き屋も今はつぶれて空きテナントの看板が貼られていた。

この街に住んでいた当時の僕はニートのような状態で、いつも昼間っから自転車でウロウロしながら未来の仕事のイメージを広げていた。

嫁が仕事をして、僕はネットと株で収入はあるもののやっていることはニートで、そのくせ東京まで心理の勉強に行ったりしていた。

頭の中にはこうなりたいというアイデアでいっぱいだったけど、お金も能力も経験も無くて、悶々としながら未来へのイメージを広げていた。

当時よく行った公園には、昼間だからか子供連れのお母さんがたくさんいて、ベンチではサラリーマンが1人で座って弁当を食べていた。

よくこの公園で早朝からipodで経営コンサルの対談を聞きながら走っていた。そうでもしなければ自分を保っていられなかったからだ。

自分はやっていけると強く強く信念を固めてイメージを保っていても、翌朝目が覚めると自分は夢に逃げてるだけなんじゃないかと思えて不安に潰されそうになった。

いつもみぞおちのあたりに重い不安の塊のようなものがあった。

それに飲み込まれないためには違う情報を頭に入れ続けることと、走ることしかなかった。

あの時の孤独感。何もない自分への怒り。無力感。家族を持っていることの不安。

その惨めさったら無かった。

でも、今はお前の夢は全部叶えたからな。お前が培った知恵は全部人の役に立ててるからな。今では信頼してくれる仲間もできたからなって、

公園のベンチでそう強く思ったらなんだか泣けてきた。

逃げなかったな。よくやったなって。

この真っ昼間の深江橋の公園の、横でサラリーマンが弁当食ってるベンチで、一人で高らかに勝利宣言をした。

お前が正しかった。お前の勝ちだと、昔の思いを供養した。

人は誰でも冬の時代を通過する。

未来に望むものが大きければ大きいほど、冬の寒さは厳しいものとなる。

見ているヴィジョンと今の自分とのギャップに苦しむ。やってることが普通と違いすぎて孤独を感じる。自分の在り方を社会に説明する言葉も無い。周りと比較すると惨めな気持ちになる。

でも冬は省くことの出来ない成長のプロセスだ。

ヴィジョンを結晶化させるために、寒さでギュッと実を内側に凝結させて、春の芽吹きに備えているのだ。

でも、冬のただ中を生きる当人にはそうは思えず、まるで神様が自分に意地悪をしているのかと思うくらいに上手くいかないし、流れが停止してしまう。

そんな人生の冬を生きている人達の、それでもそこから逃げずに通過しようとする人達の味方でいたいと僕は思っている。

ヴィジョンを持つことで自分の人生に冬を招き入れ、その寒さに耐えながら粛々と進んでいく人達の誠実さが好きだ。僕はその人達の側にいたい。

冬を追い出すことで、人生から四季を無くしてはならない。

誰かの華やかな才能に惹かれるとしたら、それは同時にその人の生きた冬の深さをそこに見ているのだ。

夏はバカみたいに咲き乱れて秋の収穫が終わったら、また次の冬に備えたいと思う。

 

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1 Comment

久保田

はじめてこのサイトに辿り着きました。
「冬の時代」、恐ろしいです。
自分も今「冬の時代」なのか? それとも「冬の時代」でも何でもなく、単に甘い夢だけを見て年を取っていくだけの愚かな人間じゃないのか? 自分は道を間違えたんじゃないのか? 具体的に動く道も見つからず、内向的な自分を甘やかして自分の世界に引きこもっているだけじゃないのか? 冬なのならば、春は訪れるのか?? 自分を信じていいのか。
冬どころか暗い道です。たったひとつのカンテラの明かりだけを信じて歩いているようです。 

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