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少年の情熱は山を越えるか

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中学1年の頃、部活中にバレーボールの球拾いをしながら、親友のM君がおもむろに言い出した。

「エロ本が見たい。」と。

とにかく見たいと、そう言い出した。

こんな唐突な発言になるまでにはもちろん、中学生ならではの幾つかの伏線があったのだが、それはここでは省略するとして、

とにかく彼は、そして僕も、女の人の裸を見てみたかった。

田舎の中学生の、女性へのあこがれは過剰だ。

その情熱を表明するだけで熱狂と共感が生まれ、誰とでも友達になれるくらいに、それは男子達の共通言語だった。

僕らは球拾いをしながら、どうしたらそれを見れる? 何か良いアイデアは? と、お互いの考えを出し合った。

その結果、

隣町の古本屋なら立ち読みできるのではないか!!

というアイデアに行き着いた。

そして、さっそくその日の午後に、僕はM君と自転車で山を越え、となり町の古本屋へ繰り出した。

中学生の女性への情熱は、山をも越えたわけだ。

古本屋に着き、中に入った僕らは興奮を抑えつつ、しばらくソワソワと普通の本を見ながら呼吸を整えた。

そして、ついに好奇心は沸点に達し、M君がエロ本を手にした瞬間。

無慈悲にも

「コラ!!」という店主のおじさんの声が店に響いた。

「そんなもん見るな!」

そう凄む店主。

シュン…っと気落ちするM君。

まさか、計画がこんなにあっさりと破綻するとは…。

思えば当然の話だ。

普通の本屋では無理なことが、なぜか「古本屋なら行ける!」 と思えたのは、よく考えてみると僕らの勝手な思い込みだ。

「帰ろう…」と、M君は一言残して、店を出た。

帰り道、二人で自転車を押しながら歩いた。

あんなに希望に満ちて下りてきた坂道が、やたらと長く遠く感じられた。

自転車を押すM君の落ち込みがハンパ無かった。

シュンとするにも程がある。

僕は気落ちした親友にどんな声をかけて良いのか分からなかった。

しばらく考えたあげく、「元気出せや…。」とだけ言った。

「うん。」っと応えて、自転車を押すM君の落ち込みようが、やっぱり圧倒的で。

エロ本を求めて、そして破れて、敗者のように自転車を押す彼の姿が、絵的になんだかとてもおかしくて、僕は笑ってしまった。

それを見て、「笑うなや!」と言って、M君も笑った。

まだまだ遙か遠い、女性への道。

甘酸っぱい、どこにでもありそうな中1的寓話だ。

しかし、残念ながら、

非常に残念なことではあるが、これは実話だ…。

そして、どうしてこんな話をしたかというと、今が夜中の3時だからというということもあるけれど、それだけではない。

今日、マクドナルドでスマートフォンをいじっていた中学生の姿がとても印象的だったからだ。

スマートフォン。

それ1つで世界中の情報にアクセスでき、無数の無料ゲームを手に入れられるツール。

中学生はその画面を指でスルスルと弾きながら、憂鬱そうにうなだれていた。

自分が中学生だった頃にスマートフォンを持っていたらと想像すると、ゾッとした。

どこにでもアクセスできることで、世界は近付いただろうか?

少なくとも遥か遠くの憧れの女性やポルノグラフィは、身近な画面に表れるようになっただろう。

でも、僕らが体験した、あの頃のヒリヒリするような憧れと秘密に満ちた世界のキラメキが、彼らの世界にあるだろうか?

彼らの情熱は、性欲は、山を越えるだろうか?

そんなことを思いつつ、

あるいはまた彼らは彼らで、この過剰な時代の生きづらさの中に、情熱の行き先を見い出して、

僕らおっさんが想像もできないような新しい世界を作り出すのだろうか? とそれを願ったりもした。