NHKでやっている『ドキュメント72時間』が面白い。
最近のテレビ番組で一番好きかもしれない。
特定の場所の72時間(つまり3日間)を取材し、そこを訪れる人にインタビューをしているだけの30分番組で、
その場所は、ゲームセンターだったり、肉屋さんだったり、ショッピングモールのフードコートだったり、無人駅だったりする。
そこに訪れている市井の人々にカメラを向けて話を聞くだけなのだけど、それが異様に面白い。
先日放送の番組のタイトルは『黄昏のゴルフ打ちっぱなし』
東京の足立区にある開業40年の老舗の「打ちっぱなし」が舞台。
24時間営業の打ちっぱなしに訪れる人達にカメラを向ける。
そこには一見すると普通の人達の、様々な物語が垣間見える。
夜中に熱心に一人で打ち続ける女性に声をかけると、子育て中の主婦で、家族が寝静まってから夜中に一人でストレス解消のために打ちに来るのだとか。
朝の4時まで一人で黙々と打って帰っていった。
そして早朝から打ちに来た80歳の福々しいおじいさん。
「いやー。ありがたいね。」と上機嫌。
自分は小学生の頃には母の元を離れて丁稚に出て、夜にお母さんが恋しくて寂しくて毎晩泣いていた。今でもそのことを思い出すと涙が出ると、実際に涙を溢れさせながら語る。
でも、それが今では自分の車でゴルフを打ちに来れるまでになった。豊かになった。ありがたい。ありがたい。
80歳になっても、まだ飛距離が伸びるんだよと語る。
またカメラは違った人にフォーカスする。
夕暮れ時の場内で、打つこともなく椅子に座って遠くを見ている男性がいる。
声をかけると、「高校生の息子が最近ぼくと一緒にいてくれなくて」と寂しそうに笑う。
男性は韓国人だと言う。
日本人の妻と韓国人の自分との間に生まれた息子。
高校生になって、日本と韓国の間で引き裂かれているという。
日韓の仲が悪くなったことで余計になのか、最近自分と一緒にいたがらない。
この打ちっぱなしにはそういう人がいっぱいいるんじゃないかな、と語る。
玉を打ちにくるんじゃなくて、家に居場所が無いからここに来ている人もいっぱいいると思いますよ。
たった30分の番組でさらりと見せてくれる、市井の人々の人生の奥行きと広がりに、思わず唸る。
それ以外にも、離婚した元妻と離れて暮らす娘と、「元家族」としてコースを回るのが夢だという男性。
バブルの頃から1000万は使ってきただろうと言う団塊の世代の男性。
クラブセットをプレゼントしてからゴルフにハマってしまったという50代のカップル。
市井の人が普通に生きている日常の手触り。
でもどこにも普通なんてありはしない。
突出した人のドキュメンタリーも面白いけど、普通に暮らしている人たちの決して普通では収まりきらない日常のリアリティにはまた違った感慨がある。
パラレルに展開している人それぞれの人生と現在。
それにいつも心を打たれる。
意図的な演出や意味付けを排して、素材のままの切り抜こうとしているドキュメンタリー精神も素晴らしい。
みなさんも是非、見てみてください。
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