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ペルソナの外で人と出会うということ

 東京にてカウンセリングの仕事を終えてホテルへと向かう道のり。


キャリーケースを引きながら1人でとぼとぼと歩いて、

小さな道を赤信号のまま横切った。

 

疲れた頭の片隅でそれが赤信号なのはなんとなく気付いていたけれど、人通りも車の通りも無い深夜の小さな道。

足は無意識にそのまま進んだ。

そしてふと顔を上げると、目の前に自転車に跨って赤信号を待っている若い警察官がいて、「あ…。」とお互いに目が合った。

 

ドキッとしたのは僕の方だけではないらしく、警官も不意を突かれたようで、お互いに戸惑い、気まずい緊張が走った。

その若い警官の表情は、しまった…と狼狽えているようだった。

しまった…油断した…。


警官として注意するには気を緩めすぎていた…、とでも言うように、

その若い警官は青年本来の優しい人柄が溢れ出てしまっていた。

もう一度気持ちを立て直して信号無視を注意するには、柔らかい心を無防備に表しすぎていた。

 

無理だ。立て直せない。でも注意しないと…。

 

一瞬の緊迫した空気の中、そんな若い警官の心の動きが見えてしまって、僕は「ははは…」と申し訳なく苦笑した。

すると、若い警官の表情もほぐれ、「はははは…」と苦笑を返した。

 

青年らしいあどけなさがこぼれた。

「お互い油断してしまいましたね。」と、言葉にせずともそんな気持ちが伝わってきた。

 

「いやほんと、どうもすみません」と僕は言葉にはせずに頭を下げ、警官も頭を下げて「はははは」と笑った。

そうするとこちらの緊張もほぐれて、なんだか可笑しさが込み上げてきた。

 

「やっちまいましたね。お互い立場は違えど不完全さは一緒ですね。」とでも言うような温かい共感が芽生えてしまって、それが可笑しくて温かくて、嬉しかった。

 

そして、お互い通り過ぎた後も更に振り返って、名残り惜しそうに「どうも」と頭を下げて気持ちを送り合った。

 

2人の中に一瞬の友情のようなものが芽生えてしまっていた。

 

彼が警察官であり僕が一市民であるという役割を離れたところで、人と人が生身で出会ってしまったことの衝撃と、

それを言葉もなく察知し許し共感し合えたことの感動があった。

 

人はお互いの心の生身の温かさに触れてしまうと、ほんの一瞬だけでも既に名残り惜しいと感じるものなんだな。

 

凄いな。

深くつながることはパワフルな喜びなんだな。

と、そんなことを思いつつ、時折振り返ってはお互いにペコペコと頭を下げながらお別れをした。

 

僕らの心の深いところが求めて止まない、人生の柔らかい手触り。


本当に思いもよらない瞬間に、ご褒美みたいにそれに出会う。


今日も良い日だ。  

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